1.ワイヤレスボディエリア通信の研究

複数の情報機器を人体に分散配置して構成する人体無線網(Wireless Body Area Network: WBAN)が提唱され,例えば,生体センサなどを人体表面或いは体内に配置し,医療やヘルスケア情報を取得・制御・管理する医療支援のための通信システムの実現が期待されています.人体無線網は,

  • 日常の血圧,脈拍,心電図などの健康状況や運動量などを知ることで健康管理に生すヘルスケア分野への応用を主目的とするOn-bodyで通信するウェアラブルBAN
  • カプセル内視鏡のように体内の医療用情報を体外へ伝送するIn-body通信のインプラントBAN

に分類され,その利用周波数帯も10-50MHzのHBC(Human Body Communication)帯,400MHz帯,2.4GHz及びUWB(Ultra Wideband Band)と多岐に亘っています.

本研究室では,10-50MHzのHBC帯,400MHz帯及びUWBを中心に,

  1. On-body/In-body伝送路モデルの開発
  2. On-body/In-body通信に適する変復調方式の研究
  3. In-body通信機の体内位置同定の研究
  4. 各種On-body/In-body通信機の試作及び通信フィージビリティの実験的検証

を行っています.

 

名古屋工業大学未来通信研究センター:http://cfcr.web.nitech.ac.jp/emc.html

【研究例 1】

  • 心電図検出と人体通信の一体化により健康情報のリアルタイム伝送を実現

胸に心電図電極を装着し,それを用いて心電図信号を取得しながら,人体通信により自動車ハンドル部に伝送し,自動車の自動制御・自動運転に活用する人体通信機を開発

  •   心電検出部と人体通信部の電極を共用し,リアルタイムの心電信号検出と伝送を同時実現
  •   広帯域インパルス・ラジオ方式を採用し,1.2Mbpsの高速伝送を実現
  •   送信部に搬送波不要,CMOS構成で,小型,低消費電力に寄与
  •   微弱電波法を満たし,ライセンス不要,高秘匿性

【研究例 2】

  • カプセル内視鏡の高速画像伝送を想定した広帯域インプラント通信機を2種類開発

①. 3.4-4.8GHz UWB Low Band通信機

  • インパルス・ラジオ型多値パルス位置変調(MPPM)方式を採用
  •  体内12cmまで最低1Mbpsの高速通信を実現
  •  豚を用いた動物実験により通信フェージビリティを検証
  •  ダイバーシチ受信による更なる通信距離の向上を検討

②. 10-50MHz HBC帯通信機

  • インパルス・ラジオ型OOK変調方式を採用
  •  磁性材の導入により体内送信アンテナの超小型化を実現
  •  体内26cmまで最低1Mbpsの高速通信が可能

インプラント高速通信についての取り組み(SCOPE委託研究)

【研究例 3】

  • 筋電義肢制御用信号のワイヤレス化を実現
  • 筋電義手の制御用信号のワイヤレス化に向けた人体通信機を開発

腕表面に装着した3つの電極により筋電信号を取得,取得した筋電信号を人体通信により義手の動作制御部に伝送し,モータ制御を行うことで義手を操作

  •   微弱電波帯(10-50MHz)を採用
  •   広帯域インパルス・ラジオ型マルチパルス位置変調(MPPM)方式を採用し25Mbpsの高速伝送を実現
  •   送信に搬送波が不要なため省電力な通信が可能
  •   MPPM方式により静電気放電(ESD)や外部電磁放射等のノイズに対し高い耐性をもつ
  •   様々な人体装着型ロボットへの適用が可能

【研究例 4】

  • カプセル内視鏡位置推定・トラッキングの研究

体内に埋め込まれるインプラント機器の位置は外部から直接は確認できないので,例えば,カプセル内視鏡のように体内を動く場合にはその位置を把握することが重要になっています.そこで,本研究室は,カプセル内視鏡からのIn-Body伝送による無線信号を利用して,消化器官を移動する内視鏡位置の取得や内視鏡の移動経路をトラッキングする方法について研究しています.

①. 400MHz帯信号を利用した受信電力による位置トラッキング

  •  400MHz帯In-Body伝送時の受信電力変動の確率モデル化
  •  受信電力変動の確率モデルとパーティクルフィルタによるトラッキングの開発
  •  計算機シミュレーション上において1cm以下の推定精度を確認

②. UWB帯信号を利用した信号到来時間・受信電力併用方式による位置推定

  •  信号到来時間と受信電力による人体内部誘電率推定モデルの確立
  •  事前に内部誘電率構造を必要としない位置推定方式の開発

【研究例 5】

  • 生体医療EMCの研究

人体周辺での無線通信においては,安全・安心の確保が求められています.本研究室では,安全・安心なボディエリア通信システムの確立を目指し,

  1. 通信電波の生体影響を解明するための実験動物ばく露装置の設計と開発
  2. 通信電波の心臓ペースメーカーへの電磁干渉の機構解明と評価手法の研究

を電磁界的アプローチと回路的アプローチの両方から研究しています.


 

2.車載通信のEMC

自動運転やコネクティッドカーなど、自動車の電子制御システムが高度に発展しており、車両システムには高い信頼性・安全性が要求されています。この要求を満たすためには、「不要なノイズを出さず、ノイズによる誤動作を防ぐためのEMC性能(電磁適合性)」を確保することが重要です。しかし、高度化に伴う機器や機器同士の通信の進化により、機器で生じるノイズが増加し通信周波数帯も高周波化しているため、EMC設計が困難になってきています。

本研究室では、名古屋工業大学未来通信研究センターと連携し, システムの重要な構成要素である車載通信のEMC設計技術ならびに評価技術の確立を目指した研究、ならびに国際標準化活動を行っています。

【研究例 6】

  • 新しいEMC評価系の研究

車載通信系のEMC性能を評価する場合、評価環境の違いによって被試験機器は異なるEMC性能を示すことがあります。そこで本研究室では、実車環境とそれを模擬した標準的な評価環境の違いに着目し、ノイズの結合量・伝搬量の変化の要因の解析およびそれらを低減するための研究を行っています。また、評価系の高周波特性を精度よく評価するための新たな測定法についても研究しています。

【研究例 7】

  • 車載通信用EMCデバイスの評価・測定法

EMC設計に用いられるコモンモードチョークやESD保護デバイスには, 高いノイズ耐量と通信特性が要求されるため、信頼性の高い高周波特性の評価法の確立が求められています。そこで本研究室では、試験治具や試験機器の最適化や新しい評価方法の開発を通じて特性評価の信頼性を向上する研究と、IEC 62228-5, OPEN Alliance等での国際標準化活動を行い通信のEMC設計・評価技術の向上に貢献しています。

【研究例 8】

  • 高周波ノイズの車載Ethernetの通信品質に対する影響の研究

車載通信のEMC設計を確かなものにするために、ノイズによる通信エラーのメカニズム解明が必要です。そこで本研究室では、外来ノイズの通信線への結合・伝搬や、それに起因する通信エラーについて、実測とシミュレーションの両面から解析する研究を行っています。